先月『SHOGUN』がエミー賞最多18冠を受賞しましたね!今日は世界から見た日本文化と伝統文化の継承について書きたいと思います。
「セリフの7割が日本語の時代劇」を世界が称賛
先月『SHOGUN』がエミー賞最多18冠を達成しました。
セリフの7割が日本語のホンモノの時代劇が世界で称賛されるとは前代未聞です。
これまで海外の映画やドラマで描かれる日本や日本人は、ホンモノとはほど遠く、日本人からすると何だこれは?というような描写が多かったですよね。
文化的に日本と中国とごちゃまぜにしたような笑ってしまうような描写が多かったと思います。
しかし、よく日本を知る人をのぞいて海外から見る日本とはそんなもんなんだろう
それゆえに今回の『SHOGUN』エミー賞最多18冠受賞はなんとも感慨深いですね。
私と同世代のほとんどの日本人はそんな時代が来るなんて想像できなかったと思います。
「日本舞踊から武道まで」日本の伝統文化を知る真田広之
史上初でホンモノの日本の時代劇を世界に発信した真田広之さんは、もともと日本文化に深く精通した俳優さんです。
真田さんは1960年、東京都出身。5歳で子役デビューし、13歳で、千葉真一さん(1939~2021年)が世界的アクション俳優を育成しようと設立したジャパンアクションクラブ(JAC)に入団した。同時に日本舞踊玉川流で名取の腕前になるなど、幼くして殺陣や着付け、所作など和の基本を体にたたき込んだ。(引用元:産経新聞 2024,09,1)
真田広之さんは現在、60代半ば。その世代で日本舞踊や着付け、和の所作などの日本の伝統文化をしっかり学んだ日本人はなかなかいないですよね。
また、真田広之さんは千葉真一さんのジャパンアクションクラブ(JAC)で少林寺拳法や殺陣、スタントを学んでいます。
子役時代から時代劇で演じていることから、まさに武士の役を演じるのに最も相応しい俳優ではないでしょうか?
日本の伝統文化を海外に知らしめるためにこの世に生まれてきたのではと思います。
今回の授賞式の中で、真田広之さんが壇上で「手短に日本語で話させてください」と司会者に伝えて日本語で感謝の思いを述べました。
「これまで時代劇を継承して、支えてきてくださったすべての方々、そして監督や諸先生方に、心より御礼申し上げます。あなた方から受け継いだ情熱と夢は、海を渡り、国境を越えました」
『SHOGUN』の成功を、自分が成し遂げた偉業とするのではなく、面々と受け継がれてきた時代劇の先人たちの努力と感謝の意を表したスピーチに感銘を受けました。
『SHOGUN』エミー賞最多18冠でわかった時代の大きな変化
『SHOGUN』の主な視聴者は18歳から40代
世界における『SHOGUN』の主な視聴者は18歳から40代だそうです。
日本人の感覚だと時代劇は高齢の人が好むイメージですが、世界では逆に若めの世代が好んで視ているということですね。
『SHOGUN』はすばらしい作品であることは間違いないのですが、時代が変わり、世界の人々の価値観が大きく変化していると感じます。
Z世代を中心に「字幕」の映画やドラマを観る人が増えている
そして『SHOGUN』の大ヒットした理由のひとつは、以前と比べて字幕の作品を楽しむ人々が増えたことのようです。
字幕で作品を楽しむ人々が増えた背景には以下のような変化があるようです。
- SNSなどの利用でキャプションを読む人が増えているので字幕に抵抗がない
- コロナ禍で在宅時間が増えて字幕の作品を楽しむようになった
- 韓国ブームなどもあり、異文化の作品を字幕で楽しむ若い世代が増えた
そして、まさにこの字幕の作品を楽しむ世代は『SHOGUN』の視聴者と共通していて40代以下の世代のようです。特にZ世代においては顕著な傾向のようです。
多様性の時代によってホンモノの日本文化が求められている
長らくハリウッドはで白人(男性)至上主義の時代がつづいていました。それは受賞作品や受賞者にも如実に反映されていました。
しかし、時代が変わり多様性を尊重する時代になりつつあります。
同時に、若い世代の人々は異文化についても関心が高くなり、ホンモノの文化を求める傾向にあるようです。
『SHOGUN』が世界に受け入れられたのは今の時代だからこそ
私が初めて海外留学した35年前は、海外でホンモノの日本の時代劇を観たいと思う人々は、正直言って稀(まれ)でした。
今とちがってそもそも日本文化に興味がある外国人はかなり少数でした。
食文化にしても、当時はようやく欧米の金融や弁護士界隈のビジネスマンがSUSHIを食べて日本酒を嗜むことがカッコいいみたいな風潮になりつつあった頃です。
今でこそパリでおにぎり屋さんが大盛況ですが、当時はロンドンやパリで黒い海苔を巻いたおにぎりは得体の知れない不気味なものレベルに思われていました、笑。
あらためて、今の時代は日本の文化に関心をもつ海外の人が増えたのだと実感します。
<2024年度>米国版&英国版『コンデナスト・トラベラー』世界で最も魅力的な国に2年連続第1位に選ばれた日本
大手旅行雑誌『コンデナスト・トラベラー』が2024年10月1日(火)に発表した読者投票ランキング「リーダーズ・チョイス・アワード」の米国版、および英国版において「世界で最も魅力的な国」として、日本が2年連続で第1位に選出されました(引用:JNTO日本政府観光局HP)。
世界の人々が感じる日本の魅力を以下は以下のとおりです。
- 食文化(伝統食~ご当地グルメやB級グルメ)
- 伝統文化とモダンカルチャー(アニメやゲーム)
- 治安の良さ
- テクノロジー
- 丁寧なものづくり
- 歴史と自然
- 礼儀正しさ
- 医療レベルの高さ
もちろん、今の日本にはいろいろな問題が山積みです。
しかし、これらのことがあたりまえに享受できる日常を過ごすことができる国はすばらしいと思います。
普段、日本で生活している私たちはあまり意識してないですけどね。
日本人から見た日本と世界の人から見た日本の大きなギャップ
日本人から見た日本
この数年、日本は長期的な経済低迷や円安がつづいていることもあり、国力が低下している状態です。
そして若者は将来について明るい将来を思い描くことがむずかしく、少子化もすすんでいます。
日本に対する日本人のイメージは少子高齢化やどんどん高くなる社会保険料や物価、正直ネガティブなものが多いですよね。
世界から見た日本
一方で世界から見た日本は上に記したように世界で最も魅力的なすばらしい国です。
現在、わが家の子ども達はヨーロッパで学んでいます。
2人とも日本人はおろか東洋人がほぼいない環境で学んでいることもあり、日本人はめずらしい存在のようです。
そのせいもあり、頻繁に日本や日本文化について友人や出会う人々に聞かれ、日本に関心があったり好感をもつ人が多いです。
伝統文化や歴史についてはもちろん、アニメやポップカルチャーなど様々なことについてよく知っている人もいるようで、数十年前と比較しても日本や日本文化について興味をもつ人がとても増えていると実感します。
2023年国家ブランド指数:日本が史上初の第1位に選ばれる
フランスの調査会社イプソスは、2023年国家ブランド指数(NBI)を発表、日本が史上初の第1位に選ばれました。
アメリカとドイツ以外の国がトップになるのは史上初とのことです。
経済は低迷しているものの世界における日本の評価は高まり、存在感は増しているのですよね。
日本や日本の文化、歴史に関心を持ち、日本を訪れたいという人も増えています。
日本の伝統文化の衰退と世界の日本文化への関心
莫大な費用で制作された『SHOGUN』
話を『SHOGUN』に戻します。
スケールの大きい時代劇ドラマ『SHOGUN』は制作費用がなんと数百億円と言われています。
1エピソードにかける制作費用は10億円以上というとてつもない制作費用をかけて撮影されているのですね。
もし日本で『SHOGUN』を制作決定したとしても到底この規模の予算はつかなかったでしょう。
そもそも日本で時代劇を観る人の数は減少の一途をたどっています。
日本ではドラマだけでなく大作映画にもそんな大きな予算はつけられないです。
ちなみに調べてみたところ、日本で最も制作費が高かった邦画は「ファイナルファンタジー」150億円だそうです。
今や日本人で時代劇を観る人はほとんどが高齢者だということです。
このまま時が経てば時代劇そのものが消滅してしまうことになりかねないですね。
一方、皮肉なことに『SHOGUN』の主な視聴者は世界の(高齢者ではなく)比較的若い世代(18歳から40代)です。
衰退していく日本の伝統文化・伝統工芸
同時に今、多くの日本の伝統文化・伝統工芸が衰退の危機に瀕しています。
ニーズの減少や後継者不足、原材料や用具の不足が理由のようです。職人の高齢化も拍車をかけています。
たとえば茅葺き屋根の職人さんも今や全国で200人程度しかいないそうです。
一方で、茅葺き屋根の古民家は世界的にも人気です。
外国人の観光客が、交通のアクセスが良くない地域に茅葺き屋根の古民家を見るために時間をかけて訪れています。
日本と世界で日本の伝統文化を継承する時代に
日本と日本文化への関心が世界で高まっている今、日本はぜひ今回の『SHOGUN』のように伝統文化を世界に広めていくべきだと思います。
今回、プロデュースも務める真田広之さんはまさか世界のこれほど多くの人々に称賛されるとは思っていなかったそうです。
日本の伝統文化に関心をもち、継承してほしいと願う人々も多く存在します。
これからの時代は、日本だけでなく世界全体で日本の伝統文化を支えていく時代にしていくことが望まれると思います。